
役員候補のBさんは、自分が優秀であるが故に、自分のスピードについてこれない部下たちに苛立ちを感じていました。悪気はないのですが、つい威圧的な態度として現れてしまい、部下のモチベーションに悪い影響を与えてしまっていました。
ご支援内容 - 役員候補Bさんに90分1回きりのセッションをを実施
役員育成プログラムの一環として、大手企業の役員候補Bさんと90分1回きりのセッションを行うことになりました。
エピソード
事前に事務局から頂いた部下からのアンケートには、「威圧的だ」「怖くて報告に行くのに勇気がいる」など、典型的なトップダウンかつ威圧的な姿が記述されていました。
「どんな人が来るんだろう?」と少しドキドキしながら待っていました。ノックの音がしてドアから顔だけのぞかせたのがBさんでした。期待通りの強面です。眉間に深くシワが寄り、ややうつむき加減につきあげるような目つきでこちらをひと睨みして、小山のような大柄な体を滑り込ませてきました。
名刺交換を済ませて私の略歴と今回のセッションの趣旨を伝えました。「なにかご質問はありますか?」と尋ねると、「あなたは、どうして最初の会社を辞めたの?」と問い詰めるような言葉のトーンで質問してきました。簡単に事情を説明して、セッションに入りました。
冒頭、部下からのアンケートをBさんに渡し、Bさんが目を通すのを待っていました。その時Bさんがひとりごとのようにつぶやきました。
「俺って、威圧的かなあ」
チャンスだ、と思いました。ここを逃してはすべてが無意味になります。にこやかに、「そうですね。威圧的です」と伝えました。部屋に入ってきた時の仕草や言葉遣いをひとつひとつ例示し、「どれも威圧的に感じます」と伝えました。
しばらくの沈黙がありました。腕を組み、眉間にしわを寄せながら黙っていたBさんが、ふと顔をあげて突然満面の笑みで言ったのは、「いままで、率直に威圧的だと言ってくれたのはあなたが初めてだ。ありがとう」という言葉でした。その後、何がBさんを威圧的にさせているのか、それが部下に与えている影響は何かについて考えるセッションになりました。


- コーチは歯に衣着せず、クライアントの成長のために厳しいフィードバックを伝える役割を担います。だからこそ、信頼されるパートナーと認識されるのです。


威圧的な態度を取っていたのは自分でも薄々気づいていましたが、誰にも指摘を受けなかったこともあり、うまくいかないのは部下のせいだと思うことで、自分から逃げていたんだと思います。こういう機会があって本当によかったです。