
ある建設業の3代目の社長からご相談をいただいたのは、「5人の役員をさらに成長させたい。ひとりひとりは素晴らしく優秀なのだが、部下の能力を引き出して活かすことができていないように思う。なんとかしてもらえないかな?」ということでした。
ご支援内容 - 専務Aさんにエグゼクティブ・コーチングを実施
専務のAさんをはじめ、5人の役員の方々お一人ずつとのエグゼクティブコーチングと、5人集まってそれぞれの課題を伝え合うミーティングを実施しました。
エピソード
約50人の建設業の専務Aさんとのセッションの中で、Aさんがふと「部下の3割はできる奴らだけれど、7割はだめだね」と漏らしました。Aさんの参加の部下は約30人です。単純に計算するとAさんから「ダメな奴」と思われている部下は約20人いることになります。これはコーチとして見逃すことができないコメントです。
「Aさん、客観的に見れば、50人の会社で20人が役員からダメな奴と思われてるわけですよね?それって、会社のナンバー2として許せる状態なんですか?」
「・・・そりゃあ、まずいと思いますね」
「じゃあ、宿題ですが、次回のセッションまでにあなたの部下全員のいいところをひとつずつでいいですから、リストにして持ってきてください」
という会話でその日のセッションは終わりました。
翌週のセッションで、挨拶もそこそこにAさんはにこやかに「いやあ、俺の部下ってなかなかやりますね」と言うのです。「前回のセッションでいいところを探せって言うんで、最初は頭を抱えたんですよ。でもひとりひとり日頃のふるまいや言動を思い出してみると、俺にはできないものをたくさん持ってるんだなあと気づいたんですよ」
全員の部下の名前の一覧の横に、一行一行それぞれの魅力が書き込まれていました。
「じゃあ、彼らの良さを活かして、業績につなげるには、Aさんはどうしていきたいですか?」
セッションは次の段階に入ることができました。


- コーチはクライアントに主体性を求めます。部下が能力を発揮できてないなら、部下のせいにせず自分がどうするのかを決めさせます。
- そのために、クライアントに新しい視点を与えます。「できないもの」に目を向けていたのなら、「できるもの」は何なのかを考えさせます。
- Aさんにとって「見えているのに見ようとしていないもの」は、部下ひとりひとりの良さでした。それは、Aさんに部下を見えなくさせていたレッテルをはがすことが、セッションの目的でした。


正直なところ、部下はだれも私にはかなわないと思っています。でもそれは「私のやり方の世界では」という条件付きで成り立つことがわかりました。部下は部下なりになんとかいい仕事をしようとしているわけで、それを理解してサポートすることが私の役割だと考えなおすいい機会になりました。