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【インタビュー】“コーチングスキル”を活用した取り組みで最優秀賞受賞

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大阪府下の市役所で勤務する横山裕一さんから、コーチのご依頼があったのは2017年6月のことでした。

横山さんは生活保護担当課で働くケースワーカーです。その横山さんから「生活保護受給者の自立のために、コーチングスキルが役立つのではないか。これをテーマにコーチしてくれないか」とお問い合わせをいただきました。

弊社のお客様は、経営者あるいは部下を持つリーダーの方々が大半なのですが、私としてもコーチングの可能性を試したいと思い、「生活保護受給者をコーチする」をテーマに横山さんをコーチすることにしたのです。

約半年間、横山さんはコーチングセッションを受けながら、生活保護受給者の方々との会話にコーチングスキルを試し続けました。その結果、一連の取り組みの成果を認められ、横山さんは見事、市役所の「2017年度最優秀賞」を受賞しました。

いったいどのようにコーチングスキルをケースワークに活かしたのでしょうか。また、その結果どのような成果を得ることができたのでしょうか。弊社オフィスにお招きし、詳しくお伺いしました。

インタビュー

この度はおめでとうございます。どういった賞を受賞されたのですか?

この賞は、市役所内で働くメンバーの取り組みに対する表彰です。今年度は全体で80組ぐらいのエントリーがありました。表彰の対象になるのは「市民サービス向上」と「経費削減」、「業務効率化」です。

僕がエントリーしたのは「市民サービス向上」部門で、今年度最優秀賞を頂きました。

何が評価されたのですか?

僕のやっている仕事は生活保護ケースワーカーですが、生活保護のそもそもの目的は、「お客さま(生活保護受給者)の自立」です。

その「お客さまの自立」を支援する際、コーチングスキルを活用することによって、自立を促進したことが評価されました。

また、今回受賞に至ったのは、コーチングというキーワードが新しかったということもあったと思います。部長級になると何となくは知っている言葉でしょうけど、それが職員から出てきたというのが新しかったのではないでしょうか。

他に評価されたことはどんなことでしょうか?

プレゼンテーションがうまかったといろんな人に言われました。
見せ方もあるのかなと思います。キーワードだけ画面に出して、あとはしゃべる、という感じのパターンですね。
あとは・・・情熱というか、本気でやっていたのが伝わったのではないかと思います。

実際のケースワークでは、具体的にどんなことに取り組んだんですか?

「スケーリングクエスチョン」を使いました。
窓口にお客さまが来るたびに「自立した時を【10】としたら、今どの辺にいますか?」と質問して考えてもらったんです。そして、その答えがどう変化したかを追いかけていきました。

やってみると、このスケーリングクエスチョンをした8人中、7人にプラスの変化がありました。

何点を付けるのかというのはお客さまの主観です。主観なのですが、自分で前回【3】だと感じていたのが、今回【5】になった。そう答えること自体が、本人が「自立に近づいている」と気付いている、自覚している状態を作っています。

本人が自分で「自立に近づいたということを自覚した」というところまでたどり着く、というのが面白いなと思いました。

お客さまの変化ってどのくらいの期間で生じてくるのですか?

それは結構バラバラなんです。早い人だと1ヶ月とか。

もともとこの「スケーリングクエスチョン」って、成果を図るというのはおまけみたいなものです。今まで漠然としていたものを数値化することで、方向性を本人にはっきり自覚してもらう、という意味の方が大きいんです。

だから、「スケーリングクエスチョン」をした段階で、半分成功している、と言えるでしょうね。

ということは、生活保護を受けている人というのは、自分がどのくらいまずい状態なのか、自己認識できてないということなんですか?

そうなんですよ。

結構今回の取り組みで印象的だったことがあります。
「あなたにとって自立って何ですか?」という問いから入ったのですが、お客さまは「そんなことは考えたことがなかった」と言うんです。

生活保護の目的が「自立」なのに、「自立って何か、考えたことがなかった」っていうことです。それでは自立できるはずはないですよね。

これまではゴールがはっきりしないマラソンでした。でも、この取り組みをきっかけに、お客さまも僕たちも、本当は考えなくてはいけないのに考えていなかったことを、はじめて考えることになりました。

すごくコーチング的ですね。

そうですね。

これは本当の話なんですが、カップラーメンと菓子パンしか食べてなかった人が、めかぶと納豆を食べるようになって、数年ぶりに働き始めました。他には、全然働く気がなかったような人が、ある日突然自分で仕事を見つけて、「生活保護を抜けます」と言ってきました。

やっているこちらがびっくりします。
コーチした8人の中で、生活保護から抜けた人は2人でした。

今回は、ずっと膠着しているという人をコーチする対象に選びました。もともと芽があった人ではなく、ずっと膠着状態だった人を抽出しています。だからこの結果はとても大きな変化なんです。

生活保護から抜ける人って、この取り組み前ではどのくらいいらっしゃるものですか?

それはまあまあの割合でいるんです。

元々就労意欲があったけれどリストラされて一時期収入がなくなったとか、病気とか、そういう人は自分でよくなって戻っていきます。生活保護から抜けること自体は特に珍しいものではないですね。

ですが、今回は今までずっとうまくいっていない対象者を選んで、その方が急に自立したというところに意味があると思います。

横山さん自身がコーチングセッションを受けることによって、取り組みに影響したことは何ですか?

全部です。基本的には教わったことや自分で気づいたことを全部現場で応用しました。

その中で、アクノレッジメント(承認)の効果は大きいなと思いました。自己肯定感が低い人が多いので、アクノレッジするだけで自己肯定感が高まるので、どんどんいい感じになります。

また、相手が考えたことがなかったことを考えてもらうということも効果がありました。自立って「自主性」じゃないですか。「自主性」って自分で考えるということです。投げかけられた質問について考える→自主性が育まれるというサイクルを作れたと思います。

セッションが最初の頃、僕が試したことを、コーチに「それいいですね!」と言われたので、いろいろなことを試してみようという素地がそこで養われました。まずはやってみるということ、やったこと自体が認められることに価値がありました。

すばらしいですね。やった横山さんがすばらしいです。 今回はこういった成果をあげて、受賞につながりましたが、これから先はどういった取り組みをしていきたいですか?

これを横展開していきたいと思っています。

自分でももちろん継続します。それだけでなく、ほかのケースワーカーにも伝授していきたいなと思っています。僕が今後職場で研修をしていくことを期待されていますし、他の部署にも展開できたら面白いなと思っています。コーチングに興味のある職員もかなりの数がいるようなので。

同じようなお仕事をされている方は、何人いらっしゃるのですか?

ケースワーカーは30人で、今回の取り組みは4人チームで取った賞になります。

最優秀賞は職員の前で発表する機会があるので、他のケースワーカーや、他の課の方にも見て頂きました。コーチングというキーワードが市役所の中では浸透したと思います。

それに、ケースワークの仕事の中でコーチングとティーチングという対概念が浸透したのがよかったです。
ケースワークでは、基本的には今までティーチングが多かったと感じました。人から指示されて「自立」するというのが、そもそも定義としておかしい。
「自立しなさい」と言われて自立するのは、ほんとの「自立」じゃないので。

これはよく私も出会います。「自立しろ!」「自発的に動け!」という社長さん。

その「おかしさ」に気づいたというのが、大きいですね。

すばらしいですね。私も横山さんをコーチして本当によかったです。貴重なお話ありがとうございました。

インタビューを終えて

今回はわたしたちの手がける仕事の中では特殊なものでしたが、横山さんの取り組みはそのまま企業の組織の中で活かせるものです。
多くのリーダーが「自立した部下を育てたい」と思っています。しかし現実は、指示をしないと動かない、それどころか指示をしても動かないという部下に悩んでいます。
この横山さんの取り組みは、そうしたリーダーの方々にとっても参考になるのではないでしょうか。

<インタビュアー>北方伸樹

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