部下を叱るのはできれば避けたいというのが上司のホンネですね。でも、叱らねばならない時はあるわけで、今回は、部下を持つリーダーのための「叱る極意」についてお伝えしましょう。
まず、叱る前の大前提として、リーダーとしてやっておかないといけないことがあります。
それは、判断基準を部下と共有しておくことです。もし、上司が求めている判断基準と、部下が思っている判断基準が違うものだったら、部下はなぜ叱られているのかわからずキョトンとするでしょう。叱っても手応えがないときは、それが原因かもしれません。
あたりまえがあたりまえでない?
ある行為が正しいのか正しくないのかは、なにかの判断基準にもとづいて決まります。同じ会社で働いていても、自分にとってあたりまえなことが、他の人にとっては、あたりまえではないということはあるものです。
私がコンサルタントをしていたとき、ある工場の生産計画数量と実績数量が毎日違っていました。よく見ると、実績数量のほうが計画数量の2割くらい多い日が続いています。工場長に聞いてみると、「工場に求められているのは稼働率なんだよ。機械が順調に動いて、計画よりたくさん作れているのは望ましいことなんだ。そんなのあたりまえでしょ?」とおっしゃいます。さて、計画通りに作るのが正しいのでしょうか?それとも作れるだけ作るのが正しいのでしょうか?この話は、工場全体を巻き込む大議論になっていくのですが、それはまた別の機会に。
さて、自分が正しいのか、相手が正しいのか、はたまた両方とも間違っているのか。それは判断基準をどこに置くかによって決まります。
その判断基準を端的に表したもののひとつがゴールです。ここを目指しているんだから、今きみのやっていることは効果がある、あるいは、ない、と初めて言えるのです。年末までに10億円の売上を目指すのか、20億円を目指すのかでは、そのための行動の内容も質も全く違うものになりますから。
判断基準として、ほかには会社やチームのミッションや、自分たちが仕事を進める上で大事にしたいこと、などがあります。常日頃からチームで一緒に考える場を持っておくことをお勧めします。
では、いよいよ叱る場面です。
深呼吸をして、まず最初に・・・
深呼吸をして、「責めるのが目的ではない」と心に留めましょう。部下が、何がよくなかったのかを理解し、前に向かって進んでいけるようにすることが目的です。そうなるために、部下と一緒に考え、同じ仕事人として自分が責任を持って支援しよう、と腹を決めてください。
そこで、できるだけ本音で話せるように、1対1で静かに話せる個室を用意しましょう。また、あらかじめ「〇〇の件で話を聞きたいので、時間がほしい」と伝えて、部下が心の準備をできるようにします。
話が始まったら、事実に基づいて、お互いの現状認識を確認します。何が起こったのか、どういう行動をしたのか、いまどういう状態なのか、部下との間で共通認識にします。上司と部下の視点が違うために、同じものを見ているのに違う認識をしていることはよくあります。ですから、まずここを合わせておかないと話はすれ違います。
現状について共通認識ができたら、次は本来どうあるべきなのかを話しあいましょう。冒頭の判断基準や、部下に「こうなってほしい」という上司からの期待を伝えて、あるべき状態を明確にします。
そして、なぜ現状があるべき姿になっていないのかを考えます。部下の判断や行動がその直接の要因ですが、どうしてその判断をしたのか、行動を起こしたのか、部下の思いや背景まで丁寧に聞き出すことが大切です。
ここまできたら、「で、どうする?」と聞きましょう。部下の案で足らないところがあれば補いながら、二人でここから何をすればいいかを考えていくのです。上司と一緒につくり上げる行動計画が部下を成長させるでしょう。
まとめ
おおまかな流れは以上です。要点を振り返ってみましょう。
【0】判断基準を共有しておく
【1】責めるのが目的ではないと心に留める
【2】物理的・心理的に話せる状態を作る
【3】事実に基づいて現状の共通認識を図る
【4】本来あるべき姿を明確にする
【5】現状とあるべき姿の差異の要因(思いや背景も含めて)を聞き出す
【6】一緒に今後の行動を考える
部下を叱る場面は、部下を成長させ、信頼関係を深めるチャンスです。チャンスは後ろがハゲ頭。逃さずタイムリーに、しっかりと叱りましょう。
とはいえ、自分たちだけでは大変だなあ・・・と思ったらご相談ください。