エグゼクティブコーチが、どうやってクライアントに成果をあげさせていると思いますか?
厳しいフィードバックをする。日頃クライアントが考えていない問いを投げかけて視点を変える。ビジョンやミッションを改めて描かせる。コーチはいろんなアプローチをします。でも、それが成果になるかどうかは、結局のところ、行動に移されるかどうかにかかっています。いくら目からうろこが何枚も落ちても、行動を起こして定着しなければ成果にはならないのです。
そこで、コーチは定期的にセッションを設定して、「前回から今日まで、行動を起こしてみて結果がどうだったのか」「次回のセッションまでにどんな行動をするのか」を毎回必ず聞くのです。セッションの中で行動の棚卸しをし、次までに何をするのか、クライアントが自分で決めるからこそ、自発的に行動に移そうとします。また、次のセッションで結果を話すことをコーチと約束しているので、行動せざるを得ない状態になります。
部下が行動を起こせる状態を意図的に作る
こうやって、コーチはクライアントに成果をあげさせています。ならば、部下に成果をあげさせるために、上司もこの構造を取り入れるとよいのではないでしょうか。つまり、
部下と週1回程度、1対1で話す時間を取る
ということです。時間は20分あれば十分です。その時間の中で、
「前回から今日まで、行動を起こしてみて結果がどうだったのか」
「次回のセッションまでにどんな行動をするのか」
の2点について部下から話を聞くのです。
ところで、今までいくつかの企業で上司のマネジメントスタイルについて、部下の方々にアンケートを取ってみると、「1対1で定期的に話す機会を持っている」という上司は少数派です。業務上の報告・連絡・相談については都度行っていますが、たとえば週1回、部下ひとりひとりと仕事について会話する時間は取っていないようです。
定期的に部下と話すことのメリット
私のクライアントである企業の取締役の方は、直属の部下ひとりひとりと、1対1で週1回、20分程度話をする時間を持つようにしました。始めてみてその方が実感したのは、
- 部下との距離感が縮まった。
- 気軽に話しかけられるようになったし、話しかけるようになった。
- 話しているつもりだったが、ほとんど話していない部下がいることに気づいた。
ということでした。これ以外にも、1対1で定期的に話すことのメリットは次のようなものがあります。
- 部下の仕事が計画的になり、スピードが速くなる。
- 業務上の課題や成長させたいポイントに関与しやすくなる。
- 部下に対する期待やチームの方向性を伝えやすくなる。
- 部下が今どんなことに取り組んでいるのかがわかる。
(意外にも「何をやっているかよくわからない部下がいる」という上司は多いのです) - 報告を自発的にしない部下からも話を聞くことができる。
- 部下に対するレッテル(「あいつはできないやつだ」などの思い込み)がはがれる。
- 日常の情報流通量が増え、最前線で起こっていることが即伝わってくるようになる。
- 期末の評価作業が最小限の労力で完了する。 など
本来、部下と1対1で話すということは、上司としては当然にやっておくべきことです。しかし、プレイヤー兼マネジャーという上司がバブル崩壊後に増えてしまい、部下ひとりひとりとじっくり話すというスタイルを取っている余裕がない、というのも現実でしょう。
多忙な上司だからこそ部下と話す時間を
でも、だからこそ、意識的に定期的に部下と話す時間を確保することがより重要になってきているとも言えます。そうしなければ、部下は自分でなんとか頑張るしかない状況に置かれ、気づいた時には違う方向に向かって仕事をしていたり、モチベーションを落としてしまったりという結果になってしまいます。
ただ、単に時間を取って話せばよいというわけではありません。その20分で何をどう話せばいいのでしょうか?では、具体的にその20分間をどのように進めていったらいいのか、次回以降でお伝えしていきましょう。
【次回記事】部下との会話を価値あるものにするための8つのステップ