COLUMN

部下の話を全身で100%聞けていますか?

部下の話を全身で100%聞けていますか?
投稿日
2019-04-19

目次

弊社が提供している「部下マネジメント塾」の2回目の集合セッションでは、「部下の話を100%全身で聞く」という課題を3回目までにやってきてもらっています。「聞くのは苦手なんですよね」という参加者だけでなく、「部下の話は日頃からちゃんと聞いていますから」と自信満々で職場に戻った参加者も、本人にとって意外な発見をして戻ってくることが多いのです。

「100%全身で聞く」とは?

「部下の話を100%全身で聞く」とはどういうことかというと、部下と話をするときには、

①部下のことばや声のトーンを聞く
②部下の目や表情を見る
③部下の話の背景や感情も推し量る

といったことに意識を集中することです。

そのためには、メールを読みながらとか携帯を見ながらとか、「ながら聞き」は厳禁です。気になる自分の仕事のこと、たとえば、「あの件、役員になんて説明しようかなあ」という考えごとなど、目の前の部下との会話に関係のないことは、とりあえず脇へ追いやりましょう。

とはいえ、部下が話しかけてくるたびにいつもこういう聞き方をしていたら、自分の仕事がぜんぜん進みません。だから、「いま100%聞ける状態じゃない」というときには、緊急な話でなければ「申し訳ないが、10分後に改めて来てください」と会話の場を再設定してください。

要は、「聞くときは100%聞く」そして、「聞けないときは聞かない。別途聞く時間を確保する」というようにして、メリハリをつけるということです。

聞いているつもりでも実は聞いていない

「わりと部下の話は聞いているほうなんですけどね」と言いながら課題に取り組んだあるリーダーは、これがきっかけで自分が日頃どんな状態で部下に向き合っていたかに気づきました。

それまで、携帯電話に目をやったり、パソコンの画面にポップアップされる通知メッセージに気を取られたり、次の会議のことを考えていたり、無意識のうちに目の前の部下と向き合っていなかった自分に気がついたそうです。「部下の話を聞いている自分」に意識が向いたので、自分の姿がありありと見えてきたのです。

わたしたちの感覚器官にはどんどん情報が入ってきているのですが、意識しないと情報として受け取ることができません。入ってきても、そのまま出ていき、意識に残らないのです。まあ、全部残ってしまったとしたら逆に雑多な情報でオーバーフローしてしまいますけどね。

ところで、発想法のひとつに「カラーバス」という方法があるのをご存知ですか?一見関係のないものを結びつけてアイデアを生み出すために、たとえば「赤いもの」をキーワードに、目に入るものをどんどん拾っていくやりかたです。

「赤いもの」を意識しながら街を歩いていると、飲み屋さんの赤ちょうちんや、すれ違う人が持っている赤い携帯電話や、胸ポケットに差している赤いボールペンや、道を走る赤い車、郵便ポストなど、いろんなものが見えてきます。日頃はいちいち気にしていないものが一気に意識にのぼりはじめます。

このリーダーの場合は、「部下の話を聞いている自分」に意識が向いたというわけです。でも、自分だけではありません。ほかの雑念を脇において部下の話を聞き始めたわけですから、当然「部下の話」にも意識が向きました。

その結果、「ちゃんと聞いているつもりだったけど、実は部下の言っていることをあまり聞いていなかったんだなあ」ということにも気づいたのです。

部下の話に意識を向けることで見えてきたもの

さて、部下の話に意識が向いたことで、一体何が見えてきたのでしょうか。

ある営業リーダーは、部下の話を聞いているうちに「どうして彼はそういうやりかたで仕事を進めているんだろう」という素朴な疑問が浮かんできたそうです。

自分の進め方とは違っているので、以前なら「いや、そうじゃなくてこの進め方をしないとだめだよ」と正してあげていました。そのとき意識を向けていたのは「正しい仕事の進め方は何か」という「ものごと」でした。

でも今回は「部下がなぜそうしたのか」という「思考のプロセスや背景」に意識が向いたのです。

その部下は、お客さんと親しい関係を作るのはとても得意で、相談を持ちかけられたり問い合わせを受けるというやりとりの頻度は高いのです。

でも、契約にはつながらず数字は伸び悩んでいました。いつも「ちゃんとクロージングしないと数字にならないぞ」と指導していたのですが、なかなか言うことを聞きません。「残念だがこの仕事は向いていないんだろうな。次のタイミングで異動させよう」とあきらめていました。

今回、部下の話をちゃんと聞く課題が出たので、意識的に部下の仕事の話を聞いてみました。今日も、お客さんからこんな相談があった、こんな問い合わせを受けた、という話をしてくれていました。

そこでリーダーはふと頭に浮かんだ問いを投げかけてみました。

「あなたがお客さんとそんなに親しい関係を築けているのはなぜなんだろう?」

いつもはそんなことを聞かれることはないせいか、しばらくの沈黙のあと、

「たぶん、私が目の前の人の役に立ちたいと思っていることが伝わっているからじゃないですかね」と部下は答えました。「だから、こんなことを言ってはどうかと思うんですけど、うちの製品を売り込むのはなんだか申し訳ないと思ってしまうんです」

その言葉を聞いて、リーダーはすべての謎が解けた気がしました。「そうか、彼はクロージングをするときに『申し訳ない』と感じているんだ。だからクロージングしたくないんだな」

「クロージングしない」という現象面だけをみて、クロージングしなさいと指示しても効果的ではありません。その人が取っている行動には、その人なりの理由があります。その理由がわかれば手の打ちようがあります。

でも、そこにたどり着くためには、相手に問いかけて、真摯に聞くしかないのです。

聞くことによって得られるもう一つの大切なこと

そのあと具体的にこのリーダーがどうしたのかは別稿に譲りますが、部下の話を聞くことによって得られることがもう一つあります。

それは、ふたりの関係の質が大きく向上する、ということです。わたしたちは職場で仕事を進めているとき、なかなか相手がどういうプロセスで、あるいはどういう考えでそのアウトプットを持ってきたのかをいちいち聞いている暇はありません。

そうすると、どうしても「思い」は置き去りにされ、そうしたものは職場では話してはいけないもののひとつになってしまいます。

そうした中で、上司が自分の仕事についての思いを聞いてくれたらどうでしょう?きっと「自分の思いをちゃんと受け止めてくれる上司だ」と認識するのではないでしょうか。

それはふたりの関係の質を圧倒的に向上させ、「この人にはなんでも話して大丈夫だ」という状態を作ることができます。いわゆる「心理的安全性」です。

なお、部下の話している内容をなにもかも「君の言うとおりだ」と肯定する必要はありません。聞いていて「そのとおりだな」と思うものもあれば、「自分とは違う考えなんだな」と思うこともあるでしょう。あるいは、「あきらかに間違っているな」というものもあります。これらをすべて肯定してしまったらまずいこともあります。

しかし、一旦は、「あなたはそう思っているんですね」と「部下がそう思っている」ということ自体は肯定する必要があります。そして次の質問は「どうしてそう思っているの?」と部下なりの理由を掘り起こせばよいのです。

今回は、聞くことによって得られるものについてお伝えしました。世の管理職が殺人的に忙しいことは私も重々承知していますが、部下が話しかけてきたら、そこからの数分間を部下のために投資してあげてください。その投資は必ずリターンとなって返ってきます。

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