あなたは、部下をちゃんと叱っていますか?
「部下を叱らなければ、と思うんですが、叱ると嫌われてしまいそうなので叱れないんです。どうしたらいいですか?」
コーチング研修の講師をしていたとき、ある新任管理職の方からいただいた質問です。
「叱ってください」
これが答えです。叱ることは、相手の成長のための励ましですから、そのときはいやな気持ちを味わうかもしれませんが、結局は感謝されます。あなたの今までの歴史にも、ひとりくらいはいるはずです。あのとき厳しく叱ってくれてほんとにありがたかったなあと思える人が。
だから、相手のためを思うなら、今この瞬間嫌われる勇気を持って叱ってあげましょう。
ちなみに、よく言われることですが「怒る」と「叱る」は違うものですから区別しましょう。「怒る」は相手の行動がきっかけになって、自分の感情を発散しているだけです。つまり、自分のためにやっている行為です。一方、「叱る」は前述のとおり相手のためにやっている行為です。効果的に叱るために怒っているように振る舞うことはありますが、それはまあ一種の演出です。
さて、ここまでは叱ることに関する一般論ですが、リーダーにとって部下を叱る意味は、それだけではないのです。
リーダーが部下を叱らなくてはならない2つの理由
リーダーはチームの成果を出すことが使命です。成果の障害になることは排除し、成果に貢献することを促進しなくてはいけません。こう考えたとき、リーダーが部下を叱らなくてはならないのはなぜか。理由は2つあります。
理由①:望ましくない行動がそのまま損失につながるから
たとえば、できないことはできないとはっきりお客さまに伝えられない部下がいるとしましょう。お客さまの要望をそのまま引き受けてしまい、結局後日「実はできないんです」と回答することになります。そうなると、お客さまからの信頼を失い、取引が止まってしまうことも懸念されます。
もし、部下の望ましくない行動(できないことはできないとはっきりお客さまに伝えない)を放置すると、チームや会社を危険にさらすことになります。
理由②:他のメンバーのモチベーションを落とすから
たとえば、自分の業務配分や仕事内容に対する不満を、職場で触れ回る部下がいるとしましょう。そうしたネガティブな感情を伝えられるだけでも他のメンバーはいやな気分がしてモチベーションを落とします。
もし、それをリーダーが放置すると、その部下に対して「あの人はああいう人だから」というマイナスの定評が生まれ、レッテルとして定着してしまいます。そのレッテルをはがすには相当なエネルギーが必要になってしまいます。
また、他のメンバーも同じようにネガティブな行動を取り始めたり、状況を放置しているリーダーに対する不信感が生まれてくるかもしれません。そうしたチームで十分な成果を期待することはできません。
叱ることから逃げてはいけない
つまり、部下本人を成長させることも重要ですが、チームとしての成果にリーダーがコミットしている以上、望ましくない行動を取っている部下を叱ることは、避けて通れないリーダーの役割なのです。
とはいえ、やっぱり嫌われたくないし、想定外の反応をされるのは怖いし、叱っても効果がないかもしれないし、叱るのはやっぱりいやだよ・・・というリーダーのみなさんのために、次回は「叱る極意」をお伝えしましょう。